システムの時代
電気自動車が注目されているが、発展のためには何が必要なのだろうか?ある評論家?が市場拡大のためには、200・200・20をクリアする必要があるといっていた。最初の200は車両価格で200万円以下、1回の充電で走行できる距離が200Km、1回の充電時間が20分以内という内容である。確かに、ハイブリッドカーが全盛の今日において、市場に認知されるにはそれぐらいのレベルをクリアできなければ、ハイブリッドカーと対抗できないだろう。
しかし、自動車の利用法は多様である。個人の利用に限定しても、近場の買い物用、通勤用、週末のドライブ用、家族でのアウトドア用など多様な用途がある。また、タクシーなど限られたエリアを多くの車両が運行するビジネス例もある。路線バスも同様である。
これら限られた用途に限定すれば、200・200・20をクリアする必要は特にないのではないか?200・200・20というラインの設定は、ガソリン車全般との比較では有効であるが、自動車の市場をセグメント化すれば、必ずしも上記ラインは必要ないであろう。たとえば、路線バスに電気自動車を採用する場合、操車場に充電器または交換用バッテリーがあれば充分であろう。電気自動車の普及には、電池の技術革新が不可欠であるといわれるが、このように考えると必ずしも技術革新は必要ないといえる。
私は、電気自動車の普及には、システムとしての発想が必要だと思う。現状のガソリン自動車と同じ社会インフラは必要ない。新たな発想で電気自動車を運行するための社会インフラを考えればいいのである。充電が20分で完了しなくとも、バッテリーが交換できればよい。タクシーやバスなど同一車種を量産すれば、1台あたりのコストも下がる。バスであれば、運行時間外に充電できる。
このように考えれば、バッテリーの性能向上は必要ではなく、現状スペックでも充分運行可能である。必要なのは運行を支えるシステムである。タクシーやバスの運行に支障がないように充電ステーションと予備バッテリーをいくら備えておくか、運行計画やその実績に基づいて、車両と予備バッテリー、充電ステーションの最適配置をどうするかの問題である。つまり、必要なのは効率的な運行を行うためのシステム作りである。
今年7月1日は、SONYのウオークマンが誕生してから30年記念日だそうである。ウオークマンは、iPodに負けたわけではない。iPod+iTunes+音楽コンテンツ配信というシステムに負けたのである。iPodはデザインを別にして、ネットワークウオークマンよりハード的に優れている機能は見あたらない。個々のハードやソフトが優れているのではなく、システムがSONYより優れているのである。
SONYにはがんばってほしいが、優れたハードやソフトだけでなくシステムを構想してほしいと思う。
ITコーディネータ宮城 コラムから転載