デジタル移民のこれから

このタイトルは何だ??と思われた方は多いと思います。
■デジタル・ネイティブと”デジタル移民”
ある研究者によると、1980年頃以降に生まれた年代の方は、”デジタル・ネイティブ”でそれ以上の年代の方は、”デジタル移民”という区分になるようです。この年代を境に、ネットへの接し方が明らかに異なる行動様式を取るようです。
”デジタル・ネイティブ”世代は、物心ついた頃からネット環境があり、リアルな世界とバーチャルな世界の区分がありません。平気でその両空間を行き来します。
それに対して、筆者を初めとする”デジタル移民”世代は、リアルの世界に足場を置きながら”バーチャルな世界をのぞき見る”行動様式が一般的です。あくまでリアルの世界がベースで、バーチャルの世界は仮の空間に過ぎません。
Instagramで写真を仲間と共有する、そのためにリアルの世界で仲間と会いその様子を写真に撮る、というようにリアルとバーチャルが逆転したような行動をよく見かけます。
先日、私のゼミの女子学生に、以下のような質問を投げました。
「スターバックスに行くのは、
・スタイリッシュな空間を楽しむのが目的であり、その流れでInstagramに写真を投稿することもある。
のが目的か、それとも
・Insragramに写真を投稿することで仲間と共にスタイリッシュな空間を楽しみたい。
が目的か、どちらか?」
この質問に対して、その学生は、「後者である」と答えました。
バーチャルな世界で仲間とつながるためにスターバックスへ行く、という行動です。
まあ、、私のような”ズブズブ”のデジタル移民世代にはなかなか理解しがたい行動様式です。
■既存産業のデジタル化とプラットフォーム・ビジネス
話は変わりますが、私は宮城大学の講義で「eビジネス」を担当しており、授業の中で学生達に自分が興味を持っているeビジネスの事例研究発表を依頼しています。
毎年おもしろいテーマの発表があるので楽しみにしているのですが、今年は14名の学生が発表します。この発表テーマを追っていくと、今の学生達がどのような分野に興味を持っているかが解ります。
少し長くなりますが、テーマの一覧を載せます。
・美容の総合サイト@cosme(アットコスメ)
・スマホとアプリのマーケティング情報サイト:アプリマーケティング研究所
・スタートトゥデイ ZOZOTOWN
・株式会社GRA ミガキイチゴ
・セブン&アイHLDGS. オムニ7
・スマホアプリ『CODE』
・IKEA インテリアプランニングサービス
・エアビーアンドビー
・クックパッド
・株式会社dely 料理の動画をアプリ配信:KURASHIRU
・Amazon Dash Button
・ホテル料金比較サイト trivago
・Google YouTube
・UUUM(ウーム)株式会社 インフルエンサーマーケティング事業
皆さんはこの中でご存じのサービスはどれだけあるでしょうか?
私は、これから1ヶ月間ほど学生達の発表資料作りにつきあうのですが、”こんなサービスがあったのか”と驚くことも多いです。
学生達の発表テーマを時系列に追ってみると、今年の発表の特徴はタイトルにある「既存産業のデジタル化とプラットフォーム・ビジネス」と言えます。
例として、株式会社GRAのミガキイチゴは、ITベンチャー企業による東日本大震災被災地農業復興の事例であり、徹底したIT化による生産管理で一粒1000円もするイチゴを栽培・販売していることで有名です。オムニ7は説明するまでもないでしょう。
次に、14の事例のうち、7事例がプラットフォーム型のビジネスです。ちなみに、プラットフォーム・ビジネスとは、「複数のユーザー・グループを仲介し、両者のマッチングとやりとりのために利用される基盤」をさします。自社では資産を保有せず、取引の”場”を提供することで収益を上げるのが特徴です。
エアビーアンドビーは、プラットフォーム・ビジネスの代表格の一つであるシェアリング・エコノミーの例ですね。ZOZOTOWNは、若者向けのファッション通販サイトとして生まれましたが、近年では古着販売のZOZOUSEDやフリーマーケットであるZOZOフリマなどのサービスが充実し、若者対象のファッションプラットフォームへと変貌しています。
■デジタル移民のこれか
学生達が注目しているサービスの多くは、先にタイトルで示した既存産業のデジタル化とプラットフォーム化に他なりません。さすがに、”デジタル・ネイティブ”は目の付け所が鋭いと言わざるを得ません。
それでは、筆者のようなデジタル移民世代は、これからどうすればいいのでしょうか?いくら高齢化社会と言っても、数十年後にはデジタル・ネイティブ世代が多数派になるのは時の流れです。
デジタル化というテクノロジーの進化は大きな社会変化を生み出していますが、そのテクノロジーへの接し方によって社会変化を受容するか拒絶するかが決まるわけではありません。デジタル移民としての感性は持ちつつ、図太く変化に対応したいと思います。
<参考文献>
・木村忠正著「デジタルネイティブの時代 ~~なぜメールをせずに「つぶやく」のか~」(平凡社新書、2012年11月刊)
・「プラットフォームの覇者は誰か」(DIAMOND Harvard Business Review、October 2016)
NPO法人ITコーディネータ京都 メールマガジンより転載
https://www.itc-kyoto.jp/2017/07/03/デジタル移民のこれから-藤原-正樹/