Saas(サース)の衝撃
みなさんは、Saas(サース)というのをご存じですか? 冬場に猛威をふるった新型肺炎(SARS)ではありません。このメルマガでも紹介されたことがあるので、ご存じの方もあると思います。
Saas(Software as a Service)、つまりソフトウエアをサービスとして提供し対価を得るビジネスのことです。ソフトウエアを購入して使用するのではなく、時間決めでレンタル使用するというものです。こう説明すれば、ASP(Aplication Service Provider)を思い出されたと思います。確かに、ソフトウエアをレンタルするというビジネスモデルは同じです。しかし、あえて言えば、Saasは”次世代のASP”なのです。
ここまで書くと、「Saasは、ITベンダーの新しい商売ネタ」と憶測されるかも知れませんが、次世代というには意味があります。
●SaaSとASPの違い
SaaSと従来型ASPの違いは、カスタマイズが可能であること、他のアプリケーションとの連携が容易であること、があげられますがこの2つの違いが非常に重い意味を持っています。
2000年頃に第1次のASPブームがありました。「ソフトウエアは買う時代から、借りる時代へ」という日経コンピュータの記事タイトルが注目を集めました。
ところが、大きく市場が拡大するのではとの期待が大きい割には、その後ブームは去りASPへの需要は一部のITサービスに限定されたものになりました。
今日、ASPがSaaSとしてグレードアップし注目されるようになったのは、IT環境の進化があります。
第1は、ブロードバンドの普及です。2000年頃と比べネットワークの費用対性能は、1000倍になりました。今後さらに、2~3倍になると言われています。
高速ネットワークが安価に定額で使えるようになりました。
第2は、Web2.0と総称されるアプリケーション技術の進化です。マニュアルを見なくとも、直感的に使えるアプリケーションがエンタープライズシステム(企業で使用する情報システム)へも提供されるようになりました。それによる、操作性の向上があります。
従来型のASPは、回線費用も含めた運用コストが自社導入と同じぐらいかかり、操作性もよくない、カスタマイズも出来ないなど、ASP活用のメリットが少なくあまり普及しなかったという経緯があります。
●SaaSの可能性
SaaSのすごさは、操作性と価格だけではありません。重要なのは、エンタープライズWeb2.0といわれているWeb2.0技術が企業内システムと連携できるという点です。
例として、グーグルの地図情報、amazonの書籍情報は、それを活用するためのAPIが公開されています。デルは、グーグルの地図情報を活用し保守メンテナンスシステムを構築しています。グーグルの地図情報を活用することにより、自社で一から構築するよりはるかに安価で高性能なシステム構築に成功しています。
●SaaSの課題
このように、ソフトウエア活用の新たな道を生み出しているSaaSですが課題も多くあります。
第1は、ソフトウエアのみをサービスとして提供するには限界があるという点です。企業や個人から見るとソフトウエアはサービスの一部にすぎません。
コンテンツの提供や人手を介さなければならない作業への支援も含めたサービスとしての提供が必要です。
第2は、使いこなすためのスキルをいかに育成するかです。Ajaxや他のWebサービスを使うことにより、操作性は確かによくなり”直感的”に使えるようになりました。しかし、操作できると言うことと、いかにどのような目的で使うかは別問題です。
MITのブリニョルフソンという研究者は、「IT投資で効果を生んでいる企業は、コンピュータへの投資[1]に対し組織や人へ[9]の投資を行っている。」
と主張しています。
SaaSが今カバーしているのは、単に[1]の部分だけと言うことになります。
このように課題も多いSaaSですが、IT活用の新しい道を開きつつあることは事実です。
注:
総務省からASP・SaaSの普及促進策に関する報告書が公開されています。下記、
URLからダウンロードできます。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/070427_14.html
この報告書は、総務省が、ASPIC Japanと共同して、ASP・SaaSの課題と今後
の普及促進策について調査研究を行ったものです。
上記報告書では、ASPとSaaSが同義として扱われています。しかし、実際の
意味としては、「SaaSは進化したASP」という定義がより近いように思います。
ASPについては、ITコーディネータ京都のメンバーが中心となって2002年
に執筆した「中小企業向けASP利用IT化推進マニュアル」を参照して下さい。